近くば酔って目にも読め

2022年12月15日 (木)

本/亡国のハントレス

Photo_20221215132701  先日NHKの「映像の世紀 バタフライエフェクト/ナチハンター・忘却との闘い」を見て、とても面白かったこの本を思い出した。ドイツ占領下のポーランドで子供や捕虜を虐殺し、その後終戦とともに姿を眩ませた、ハントレスと呼ばれる戦争犯罪人を探し出し、裁判にかけるナチハンターの追跡と、当時その現場にいて顔を知る生き証人となった元ソ連女性飛行士の半生。そして父の後妻になった女性に違和感を持つ娘。この3つのストーリーで構成される、史実を基にした小説。女性飛行士の話は本屋大賞に輝いた「同志少女よ 敵を撃て」を思い出すけど筋は1つ。こちらは3つが行きつ戻りつしながら収束していき、息詰まるラストは圧巻の興奮感動モノだった。今年の6月にドイツの裁判所が、かつて強制収容所で3,500人超のホロコーストに加担した、101歳の元看守に禁固5年の判決を下していて、今もまだこれが続いていることを知る。凄い。

 

2022年4月14日 (木)

藤子不二雄Aさん逝去

1_20220414171401  藤子不二雄Aさん(安孫子素雄)が4月7日に亡くなった。まんが同好会を結成していた中学生の頃に憧れていた、手塚治虫、赤塚不二夫、横山光輝、小沢さとる、白土三平、そして当時は画風の師だった石森章太郎(石ノ森章太郎)などはもうとっくに空の上だ。「藤子不二雄」は藤子F不二雄(藤本弘)との共同ペンネームで、コンビを解散後にFとAで区別したことは知っていたけれど、合作の代表作はオバケのQ太郎くらいで、他はどちらかの単独作品であることを今日に初めて知った。持っていたこの2冊はどちらが描いたか調べたら両方ともAさんだった。添乗さんが発刊された昭和52年(1977)当時の、募集団体旅行のイメージが反映されていて、誇張はされているものの「そうそう、そうだった」の共感が懐かしい。中坊当時の同好会メンバー5人のうち、絵コンテのスクリプターだかになった女性が一人。当時の合本が3冊ほど押入れの何処かにあるはず。ン十年ぶりに見たい気もするが恥ずかし怖い。R.I.P.藤子不二雄Aさん

 

2021年12月31日 (金)

深夜+1 今年も命日

Photo_20211230112401  12月は命日だらけ。我が道楽バンドのリーダーとベース弾き。浪曲師の国本武春サン。さらに今月初めとつい先日、音楽繋がり友人2名が空の上に逝った。で28日はかつて在りし日本冒険小説協会の会長、内藤陳サンの命日。当時一緒に苦楽?を共にした仲間が、公認酒場だった新宿ゴールデン街・深夜+1に集まり、あの時はバナシで盛り上がった。日本中の読み手会員100名超が、昨年に刊行された海外・国内の冒険小説作品に投票。その一等賞の発表で作家さんたちと夜を徹して飲んで語り合う春の熱海全国大会。第10回の集合写真には、北方謙三さん、大沢在昌さん、船戸与一さん、志水辰夫さん、藤田宜永さん、矢野徹さん、佐々木譲さんなど、錚々たる方々が並んでいる。会員みんなとハワイにも行った。台湾や韓国にも行った。朝までお好み焼や鍋を作って呑み続けるので、毎回「来年はお断り」と言われて、流浪のホテル難民だった都内の大忘年会も思い出深い。今は昔。自分の記憶の宝物。

 

2021年5月18日 (火)

本/赤ずきん、旅の途中で

Photo_20210518221301  レンタル映画DVD5本と図書館で借りた小説3冊、どれも面白くて日中だけでなく夜も充実していたGW。そのうちの1冊が有名童話のミステリー小説?という、「赤ずきん旅の途中で死体と出会う」。発刊された昨年はとても話題になったけど、題名からしてワタクシには未知の領域と思ったので、買わずに借りることにしたら、手にするまで7か月かかった。「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠れる森の美女」「マッチ売りの少女」それぞれの短編に、アルキュール・ポワロばりの「赤ずきん」が、旅をしながら横ぐしを通す形で殺人事件を解決していくので、心の中でニヤニヤしながら読んだ。もう一つこの前作にあたる日本の昔話をネタにした、「むかしむかしあるところに、死体がありました」も同じ時に予約したのだけど、こっちはまだワタクシの前に60人が待っている。

 

2021年3月11日 (木)

本/ボニン浄土

Photo_20210303143601  本屋で目の隅に「ボニン」と見えて、小笠原の小説かなとパラパラ。調べたら評判良さげだったのでさっそく読了。13年ほど前に二代目「おがさわら丸(おが丸)」で、28時間かかって小笠原の母島・父島に行ったことがある。現地で聞いた歴史と言えば、明治の定住者ドイツ人ロースのことから、太平洋戦争の激戦地だったことまで。東京から1,000km離れていて、一度も陸続きになったことがない島々だから、最初に漂着した先住者がいたはず、なんてことは考えもしなかった。今に繋がる系譜とそれぞれの人生が、次第に収束していくストーリーは、冒険小説でもありミステリー小説でもあり。やや都合良い展開や、それ要る?のエンディングも、崖ぷち告白ドラマと思えばまた楽し。小笠原の景色が思い出されて懐かしかった。かつて訪島の折、お客さんが観光ガイドに「八丈島まで飛行機があるんだから有効に使えば良いのに」と言ったら、「羽田から八丈島まで300kmです、あと700kmはどうします?」と笑って言われたのを憶えている。また行きたいけど最低7日間必要だからなあ…。


2020年8月 7日 (金)

本/夕陽の道を北へゆけ

Photo_20200806211301 「ザ・ボーダー」に続いて、またもメキシコカルテルものながら、これは8歳になる息子ルカとその母リディアが、メキシコカルテルのボスの抹殺指令によって、誰がGPSのような追っ手かわからない中を、生きるために安全圏となるアメリカへの越境逃避行を描く、ハラハラドキドキのロードノベルだ。プロットとしてはありがちの話ながら、その肉付けがとても見事。次々と迫るその心理的恐怖と、出会う人が信頼できるのかできないのか、登場キャラに一喜一憂。疑心暗鬼のまま物語は最終章へ!という、熱帯夜に読むのはどうかと思う、アブラ汗出まくりの息がつまる小説であります。それだけにエピローグでクールダウン、読了しての深呼吸が気持ち良い。さて、読み終わってから、以前に子供二人と途中で出会ったボーイッシュな少女が、同じように列車の屋根に乗って国境を越える映画を観たことを思い出したのだが、題名もストーリーも、映画かTVかDVDか何で観たかすら思い出せない。たしか後半に少女は高圧電線で自殺した。うーん、何という映画でどういうハナシだった??? とほほ。


2020年6月26日 (金)

本/バベル

Photo_20200624211701 前出「スタンド」に続くウィルス小説第二弾は再読の「バベル」。著者.福田和代サンには2017年に岡山でお会いして以降はすっかり無沙汰。新作も読んでおらずで陳謝。さてこの小説はその前2014年に出版されている。強い感染力を持つインフルエンザウィルスの感染流行の端緒や、コロナ差別などの描写は、今となってみれば予見したようなその一致に驚くばかり。おハナシでは、感染すると一生「話す方の言語」を失うという設定なのだけど、「言語が生まれるまで"以心伝心"でコミニュケーションをとっていた人間は、言語を習得したために孤独な生き物になった」という一節があって、別の意味で考えさせられた。思うに今ではSNSというコミニュケーションツールが発達したことで、よりたくさんの人と知り合えるようになった反面、さらに「孤独なぼっち」が増えることになったのではないか。こういう時代になった今、いろいろ読み深められるタイムリーなお薦め小説です。


2020年5月 9日 (土)

本/本能寺の変 431年目の…

431 コロナの自粛生活でNHK大河「麒麟がくる」を観る余裕ができた。昨年、信長の安土城跡に行ったこともあり、毎回楽しみにしている。合わせていつ初読か忘れたけど、奥付2014年とある「本能寺の変 431年目の真実」を読み直した。著者は"明智憲三郎"、光秀の子・於寉丸(おづるまる)の子孫とのこと。もちろん明智の子孫とはいえ、新たに光秀の遺言文書や、肉声録音が発見されたなどということではなく、信長の側近が書いた「信長公記」や、秀吉が書かせた「惟任(光秀のこと)退治記」などを詳細に読み込み、著者の推測と突合せて構築した、歴史推理小説のようなものだ。が、だからこそ面白い。一般的には信長のイジメにぶち切れた光秀が、「信長め!倍返しだ」というストーリーで知られているけど、子孫としては「そんな恩知らずではない」と、そうなった理由をわかりやすく述べている。ワタクシも逆恨みで謀反はちょっととは思うが…結局、真実は謎のまま。ところでコロナの影響で、現在「麒麟がくる」は撮影がストップしているらしい、何ならも一回アタマから放映してくれても良いけど。


2020年4月30日 (木)

本/宝島

Photo_20200424192201 「右側通行は今日で最後です」と、バスガイドが言った1978年(S.53)7月29日は、大学生アルバイト添乗員だったワタクシの、初の沖縄添乗の最終日だった。その後も短期駐在としてたびたび沖縄に行く機会に恵まれて、仲良くなったスナックの女の子に、当時は魔窟と言われていた桜坂のゲイバーや、怪しい店にも連れて行って貰った。泊まっていた安ホテルは若狭という、すぐウラで時々発砲事件が起きるような場所だった。この小説は未だ戦後終わらぬ1952年のアメリカー沖縄が、日本に返還される1972年まで20年間の、受け入れざるを得ない現実と混沌、3人の若者の鬱屈と成長を描いた熱い熱い物語だ。ワタクシは未だお会いしてないけど、作者の真藤サンは、新宿ゴールデン街の深+1に何度か来店されていて、その店主のお薦めで読み、前述したような思い出もあっていたく感動したのだった。なんたって2019年直木賞!自粛中のこのGWの読書に、是非いかがのお薦め本です。


2020年4月22日 (水)

本/ザ・スタンド

Photo_20200421134901新型コロナウィルスは、中国の武漢ウィルス研究所から誤って流出したという説が、まことしやかに語られているが、先日、ぽん!という感じでこの小説を思い出した。米国の軍研究所から罹患率99.4%の空気感染するウィルスが漏れ、咳と痰の症状が出て死に至り、あっという間に死者が増えていくというおハナシで、本筋はこれによって生き残った人々が、善と悪に分かれて戦うというもの。日本で2000年に翻訳本が出たのだけど、上790頁/下630頁で2段組、1冊3,000円というシロモノだった。スティーブン・キングの大傑作との評判で、すぐに読みたかったワタクシは「えいっ!」と購入、読了してすぐに某古本チェーンへ買取に出したら1冊600円と言われ、すぐに「返せっ!」となった。で、まだこうして手元にあるわけで、今は文庫5冊になっているようだ。上巻をざっくり読み直してみたが、キングにしてはあっさりした文章で、それがかえって感染率が高く、燎原の火のごとく全米にウィルスが拡がる感じで、背筋がぞわぞわと…。さてリアルな話、せめてワクチンが出来るまでは罹患したくない。


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